短い人生の間に42本の作品を残し、生きていればヴィム・ヴェンダー
スと並ぶ世界的な監督になっていたであろう映画作家ライナー・ヴェ
ルナー・ファスビンダー(享年37歳)。没後20周年となる今年、幻の
作品だった『ベルリン・アレクサンダー広場』('79年)が、大阪・
梅田PLANET studyo plus oneにて公開されることになった。秋以降に
は渋谷ユーロスペースほか全国主要都市での上映も決定している。
今月には東京と大阪にて特別上映会も行われる。(→イベント情報参照)
この作品は、ファスビンダーが少年期のころに愛読し、強い影響を受
けたというアルフレート・デーブリンの原作を、1980年にテレビ映画
化したもの(全14話)。自分がゲイだと感じたとき、すぐに周りのみ
んなに話したというファスビンダー。彼は生前、原作について「自分
の同性愛的渇望に対する不安を認めることの手助けとなったし、抑圧
されていた自分の欲求を受け入れる助力となった」
(勁草書房『映画は頭を解放する ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー』)と話している。
■日時:2002年9月16日(月)〜11月10日(日) ※主に2話ずつ連続上映
■料金:900円 ※会員のみ全8プロ6,000円(回数券)
■場所:PLANET studyo plus one
〒530-0027 大阪市北区堂山町15-2 関西中央ビル別館B1F
TEL:06-6312-8231
https://go.to/planet1
■ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー プロフィール:
1945年5月31日、バート・ヴェーリスホーフェン生まれ。1968年に設立
した劇団「アンチテアター」のメンバーらとともに映画制作を始める。
(以下、解説・北条貴志)
1969年『愛は死よりも冷酷』でデビューし、外国人労働者への偏見を扱った2作目
『出稼ぎ野郎』で注目を集める。以降、精力的に作品を発表し続ける。『マリア・ブラウンの結婚』
('78年)で、ニュー・ジャーマン・シネマを代表する監督となり、1979年には、念
願の『ベルリン・アレクサンダー広場』を映画化。。
『四季を売る男』('71年)がドイツ映画大賞、『不安と魂』('73年)がカンヌ国際
映画祭でFIPRESCI賞、エキュメニック審査員賞、『ヴェロニカ・フォスの憧れ』
('82年)がベルリン国際映画祭金熊賞を受賞する。
フランソワ・オゾン監督作『焼け石に水』はファスビンダーの戯曲を基にしている。
私生活上では、女優のイングリッド・カーフェンやハンナ・シグラとの関係もあった
が、複数の男性との恋愛関係もあり、ファスビンダーと別れた後、自殺した者もいた。
著書に「映画は頭を解放する」(勁草書房)など。
ファスビンダーの作品は、第2時大戦後の西ドイツを舞台に、驚異的な高度経済成長
に恵まれながらも、社会の周縁に生きることになった人々の姿を通して、社会の矛盾
や人間性の本質に肉迫していく。『自由の代償』や『シナのルーレット』『ケレル』
ではゲイ、『ペトラ・フォン・カントの涙』ではレズビアン、そして、『13回
の新月の夜に』ではトランスジェンダーが登場する。セクシャルマイノ
リティだけではなく、『出稼ぎ野郎』『不安と魂』では外国人労働者な
ど、マイノリティに対する視点が顕著で、そうした主題をドラマとしてうまくとらえている。
1979年には、念願の『ベルリン・アレクサンダー広場』を映画化。
1982年6月10日、心臓障害により37歳で急死。(麻薬の服用過多ともいわれている)
|milk vol.64 2002/08/22 |home|2002 |