同性愛者がカミングアウトを躊躇してしまうもっとも大きな原因は、
同性愛やセクシュアルマイノリティに関する知識が、人によって様々な点にある。
それは性別や年代などに関係なく様々だ。
わたしたちは通常、カミングアウトした後でなければ、その人が持っている同性愛に関する知識が、
どれほどのものであるかを完全に予測することはできない。
自分のまわりにいるすべての人が、同性愛に関する共通した認識を持っていることが確定できなければ、
カミングアウトは大きなリスクを背負った行為となる。
身近な他者との一体感や集団への帰属意識が強い日本においては、そのリスクはさらに
増大する。
わたしたちが同性愛に関する共通した認識を、いまの社会に作り出して
いこうと考えるとき、同性愛に関する記事を、どれだけマスコミが書こうが、
世界のどこかで同性愛者の権利が認められる出来事が起ころうが、じつは
あまり役には立たない。
それは、成人した人の心にいったん根ざしてしまっ
た差別心や偏見を完全に取り除くことができないからだ。
たとえ、同性同士の結婚が日本国憲法で認められようとも、パレードに何十万人もの同
性愛者が集まろうと、いったん偏見を持ってしまった人たちは、心の
どこかで同性愛者を差別し続ける。わたしたち自身が、子どもの頃
に形成された同性愛への差別心を、いまでもまだ完全に捨てられないのも
同じことだ。
つまり、わたしたちが同性愛に関する共通した認識を、いまの社会に作
り出していこうとするなら、成人に達する前の段階で、同性愛に関する偏見
を作らせないようにすることが重要ということになる。
同性愛者が、この先も笑い者の対象にされないためには、大人社会に潜む偏見を取り除いていこうとする行動
よりも、教育現場のあり方を変えていくことに焦点を当てた活動の方が、ずっ
と効果的で、効率的だ。
今月は、そんな教育現場で変化の兆しが見えてきた、という記事を、池田
久美子さんの教研集会での発表をもとに、各紙が取りあげてくれているので
数本紹介したいと思う。
スポーツ紙の見出しなどには、あいかわらず差別的な表現が見られるものの、
記事の内容自体は適切なものが増加している。過去の記事も合わせて、
ご覧いただきたい。
□「私はレズ」大阪の女子校・34歳女教師が授業中告白していた
https://www.milkjapan.com/1999km11.html(99年1月21日付・報知新聞)
□大阪の女子校教諭池田久美子さん・生徒に同性愛告白「好意的な反応…」
https://www.milkjapan.com/1999km12.html(99年1月21日付・産経新聞)
□思春期悩む子いるから・同性愛 授業で
https://www.milkjapan.com/1999km13.html(99年2月1日付・朝日新聞)
□婦人公論・「さまざまな人生の選択を教えたい」高校教員池田久美子さん
https://www.milkjapan.com/1998dm18.html(98年9月22日号・婦人公論)