【MILKシネマ】公開直前・映画『ガールズナイト』徹底分析!!
2月27日(土)よりシネスイッチ銀座他にてロードショー
監督:ニック・ハラン 製作:ビル・ボイス 脚本:ケイ・メラー  製作総指揮:ピッパ・クロス 撮影:デヴィッド・オッド 音楽:エド・シェアマー
出演:ブレンダ・ブレッシン/ジュリー・ウォルターズ/クリス・クリストファーソン/他
上映時間:1時間43分 1997年度・イギリス・ビスタ・サイズ


□筆者:MITSU 1972年7月生まれ・東京都出身。映画ライターとして東京国際映画祭などの取材を担当。 MILKでは創刊時より映画関連記事を執筆。映画製作、字幕製作などにも携わる

ストーリー&解説: 舞台はイギリスのロートンスタールという田舎町。ハイテク工場で働く、 ともに44才のジャッキーとドーンは小学校以来の大親友。性格も趣味も 正反対の二人だったが、いいコンビでもあった。そんな彼女たちの楽しみ といえば、毎週金曜日に開催されるビンゴ大会。そこにジャッキーととも に参加したドーンは見事10万ポンドの賞金を引き当てる。ドーンはジャッ キーと賞金を山分けし、夫と子供に囲まれて大きな夢を膨らませていた。 しかしその後、ドーンは仕事場で倒れてしまう。病院に運ばれた彼女に 告げられた診断は、脳腫瘍で余命幾ばくもないというものであった…。

ケイ・メラーが自らの実体験にもとづいて、亡き親友デニーズへ捧げた脚 本を、母親と友人をやはり癌で失っているニック・ハランがメガホンをとった 感動作。主演は『秘密と嘘』('96)で1996年カンヌ国際映画祭最優秀 主演女優賞、ゴールデングローブ賞をダブル受賞したブレンダ・ブレッシ ン。相手役はアカデミー賞最優秀主演女優賞ノミネートのジュリー・ウォ ルターズ。1998年米サンダンス映画祭、ベルリン映画祭正式上映作品。 タイトルの『ガールズナイト』は、イギリスの大都市、田舎問わず見られ る女性の集まりで、ビンゴ大会が開かれる。

■ペンタゴン評価:2000円 T:4 S:4 A:4 P:4 M:4
(T:テンポ、S:ストーリー、A:キャスト・演出、P:映像、M:サウンド 5段階評定/2000円を超えるか、ひとつでも5がある場合、劇場で見る価値があることを示してます)

自分の余命が間もないことを知ったとき、人はその事実をどのように受け とめ、進んでいったらよいのだろうか。『ガールズナイト』は、生きている瞬間 に幸せだったと感じられる日々をおくることこそが、より正しい進み方なのだ と語っている。辛いだけの延命治療を施し、多少寿命が延びたところで、 果たしてどれほどの意味があるのか。限られた時間のなかで、精一杯生き ている喜びを、愛する友や家族と感じることこそが、人生にとってなによりも 素晴らしいことではないか、そう説いている。

2年前に、長年連れ添った親友を癌で失ったケイ・メラーは、彼女へ捧げ るこの作品の執筆にすぐにとりかかった。脚本の大半は、その時の実体験 をもとに綴られたものであるが、現実と大きく異なっているところがひとつだけ ある。それは、生前彼女が果たせなかった夢を、2人で実現させているとい う点だ。

本作は、ドーンとジャッキーの旅のシーンが中心になって描か れるが、この旅こそが、じつは現実には果たせなかった夢の部分。このシ ーンをいまでも涙なくしては見ることはできないと語るケイは、深い悔恨の 念にかられながら、入念に脚本を書き上げたのだろう。

脚本が完成し、監督を務めることになったのは、ニック・ハランだった。ニッ クは母親と友人を癌で失っているため、ケイの境遇と近い位置にいる人物と して選ばれた。しかしそれ以上に重要だったのは、コメディ専門のニックが 演出をすることで、この作品が重い雰囲気で展開するだけの悲しい物語に 終始しなかったことだ。ニック自身、「この作品を人間賛歌として描きたかっ た」と語っている。

見所は、ブレンダ・ブレッシンとジュリー・ウォルターズの名コンビの演技だ。 当初からこの二人を想定して書いたとケイも語るように、感傷的なシーンも、 実に自然に演じられている。『秘密と嘘』以来、山のようなオファーがあった がどれも満足のいくものに出会えなかったというブレンダにとって、『ガールズ ナイト』は待ちこがれていた作品。「近年、これほどうまく書かれた女性の役 はない。中年って素敵だと思えるのが最高」と語っている。

撮影は、英国ノースウェストとラスベガスの2カ所で行われた。


|milk vol.14 1999/02/22 |home1999

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