【月間メディアチェック】日本テレビ・デンマークの性同一性障害の実例を紹介
■みんなのQ&A「男の妊娠」同性愛の男性同士が子どもを持つことも可能に
■2月22日放送・日本テレビ系列『世界まる見え!テレビ特捜部』

先月22日に日本テレビ系列『世界まる見え!テレビ特捜部』にて、性同一性障害をテーマにしたデンマークのテレビ番組が20分間にわたり放送された。 放送されたのは「Fejl-emballeret af Vorherre(神々の葛藤)」と題されたプログラムで、デンマークのテレビ局が製作したもの。異性に生まれ変わりたいと願う、国内の3人の男女のケースについて、それぞれがかかえる葛藤を克明に記録した内容だった。

最初に紹介されたのは26才の女性で、タイで性転換手術(性別適合手術)を受けるまでの経緯が放送された。5年間の仕事で稼いだお金を手に、タイへ渡来したものの、1回目の手術後に、当初話していた倍以上の手術料金を請求され、途中で無念の帰国をする。手術を受けられない悲しさで、涙が止まらない彼女。その後、デンマークのテレビに出演することを決意。取材などにも積極的に受けることで、なんとか資金を貯め、再びタイへと向かうことができた。無事手術を終えた「彼」は、名前も改名し、晴れて男性となる。顔にはうっすらと髭をはやし、満面の笑みが画面に映しだされた。

次に紹介されたのは車椅子で生活をする80才の男性。彼は子どもの頃から自分の性別に違和感を抱いていたと話す。「自分が性同一性障害だとわかったころから、死んだあとは何としても女性としてお墓に入りたいのだ」と語っていたシーンが、とても印象的だった。結局この男性はイギリスで手術を受けることになり、手術も無事成功、名前も改名し、今では幸せな毎日を送っているという。

最後に紹介されたのは36才の男性。彼は比較的簡単に手術の許可が取れる“進んだ国”・オランダで手術をすることに決定した。しかし、許可の取れやすい国でも条件があり、オランダ国内での安定した収入が必要であった。そこで男性はオランダ国内での職探しを始め、オランダ語が流暢でなかった彼も、プログラマーの資格を持っていたことで何とかコンピュータ関連の仕事先がみつかる。そして許可が下りた彼は女性へと変わり、念願だったエアロビクスができるようになったのが心から嬉しいと、語っていた。

デンマークでは性転換手術を望む場合、毎年数人しか許可が降りないという厳しい法務省の審査を通らなければならない。そのため、この番組では性転換を望む人々が、海外で手術を受けざるを得ないという現状を紹介することで、デンマーク国内の遅れた行政の体質を批判している面もみせているわけだ。マスコミが持つ性同一性障害についての認識の高さも感じられた。

ところが、東京のスタジオに切り替わった途端、どうコメントするのかと思えば、いきなり出てきたフリップが、「性転換珍ニュース」。アメリカの逃亡犯が逃走の間に性転換をしていてびっくり仰天、ドイツの市長が当選後に性転換で裁判中、などという話題で場内は爆笑、それまでの神妙さは一蹴された。

同番組の出演陣は、所ジョージ、ビートたけしといった、これまでそういった立場の人たちを率先して笑い者にしてきた世界で育ってきたタレントたち。そういったタレントが、いまさら性同一性障害の人の身になって「適切な笑い」などとれるわけがないのはわかる。だったら他のゲストあたりに、わたしの身近な人にもこういう性の違和感を持った人がいる、とか、日本国内の性同一性障害に関する事例をまとめるくらいの配慮をしたらどうか。「性転換珍ニュース」では発想があまりにも貧弱だ。「おかま=笑い」という方程式に頼った日本の番組づくりは、いったいいつになれば消えてくれるのだろうか。


|milk vol.15 1999/03/22 |home1999

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