【月間メディアチェック】朝日新聞・最新の医療技術で男性の妊娠/出産が可能に
■パパだってママになれる?・専門家が見解 イギリスで賛否両論
■2月22日付 朝日新聞

最新の医療技術を使えば男性が妊娠して赤ちゃんを産むことも可能―。英国の体外受精の先駆者の一人であるロンドン大学のロバート・ウィンストン教授がこんな常識を覆す見解を発表した。人類始まって以来の営みを大転換させるだけに、早くも賛否両論が出ている。先月21日付けの英日曜紙サンデー・タイムズが報じた。

教授によると、体外受精した胚(はい)を男の腹腔内に移植し、大腸などの内蔵に「着床」させる。胎児は胎盤を通じて大腸から栄養分を吸収して成長、臨月を迎えたら開腹手術で取り出す。男性には「流産」を防ぐため大量の女性ホルモンを投与する必要があるが、原理的には女性の子宮外妊娠と同じ。実際に英オックスフォード州で、受精卵が女性の腹腔内に移動して大腸の表面に着床、無事に育って生まれるという珍しい子宮外妊娠の例があった。

これについて、ノッティンガムの不妊治療センターのサイモン・フィシェル博士は「女性が事故で子宮を失い、代理母使わずに子供をつくりたいと望んでいるカップルには倫理的に問題はなく、危険性さえなければ施術するだろうと賛成論。

また同紙は、男の妊娠を禁止するのは、法的には性差別になるので不可能なはずという専門家の意見も伝えた。

これに対し、やはり体外受精専門家のイアン・クラフト氏は、「男が妊娠可能でも、認めるかどうかは別問題。危険が伴うし、自然の摂理に反する」と反対を表明した。

理論的には可能かも/日本不妊学会理事長の森崇英・京都大名誉教授の話 女性の子宮外妊娠で腹腔に胚が着床し、出産に至った例はあり、男性でも理論的には可能かもしれない。ただ、腹腔妊娠の場合、着床した場所から胎盤がはがれて大出血を起こすなど、胎児はもちろん、母体への危険も大きい。男性の出産を社会が受け入れるかどうか、倫理的な検討もしなくてはならない。


|milk vol.15 1999/03/22 |home1999

このページのトップへ戻る