【新連載】『クラブの楽しみ方講座』 第1回「クラブの大衆化現象を嘆く人々」
■違和感を覚える現代のクラブ人気

THE RING」に「BLEND」、「Bravissima!」に「GOLD FINGER」、「Euro Trash Night」などなど、人気パーティが続々誕生している現在のクラブ・シーン。NAO NAKAMURAKO KIMURAM★NARUSEといった話題性のある人気DJなどの活躍も追い風となり、この勢いはしばらくやみそうにない。クラブイベントは、ぼくらの日常生活にかかすことのできない遊び空間として認知されつつあります。

だけどいつからこんなに日本のゲイは音楽好きになったの? と首を傾げている人もきっと多いのではないでしょうか。CDの売り上げも年々減少、携帯電話やゲーム業界にその消費層をすっかり奪われ先細りの音楽業界。宇多田ヒカルの登場で、ますます洋楽離れ(邦楽離れの方がもっと酷いかも?)に拍車がかかっているというのに、言葉の意味もよくわからない音楽をかけまくっているクラブに(外国人もべつに意味なんか気にしちゃいませんけどね)、どうしてこんなにふつうの人たちまでもが、こぞって足を運ぶのか? どう考えても不思議です。

■実態は「開かれた発展場」

その答えは、表向き「クラブイベント」という名称で扱われている、実際は「開かれたハッテン場」にすぎない、ねるとんパーティやリーマンナイトなど出会い系イベントの台頭にあります。音楽を聞きに行っている人が増えているから、こんなにもクラブシーンが盛り上がっているわけではありません。

冒頭に挙げた人気クラブイベントの多くは、いずれもこの系統には位置しませんけど、例えば新宿CODEで定期的に行われているイベント「FRIENDS」などは一日で1000人近くを集客しているお化けイベント。大阪では「B♂MB男cing」が毎回1000〜1500人を動員するほど凄まじい勢いがあります。

こういったイベントに参加するほとんどの人は、男ができるかできないか、それしか頭にないので、どのDJが、どんなプレイを披露しようかは、イベントを選ぶ上での要素には左右されないのが現状だったりします。どの相手とプレイできるかの方が大切というわけですね。

つまり、クラブという場が音楽シーンの最先端を行く、一部のヒップな人たちだけのためにある空間だなんて思っていたら大きな間違いで、いまや野郎系やイモ系兄ちゃん、親父系、太め系まで、ありとあらゆるジャンルや年齢層の人たちが、クラブという空間をこぞって利用しています。「ヒゲナイト」や「ちび専ナイト」など、細かいニーズにあわせた専門イベントだってきちんと用意されています。

もともとハッテン場のような出会いの場が存在しなかった女性にとっては、クラブイベントはネットワークを拡げる絶好のコミュニケーションツールとして人気が集まっています。女性の方はまだ音楽好き、パフォーマンス好きな一部の人の集まりとなっている傾向があって、イベント数も少ないのですが、その最終的な目的を考えれば、男性と変わらない道筋を辿っていくのは、時間の問題でしょう。

■クラブの大衆化現象に怒っている人々

そんなクラブの大衆化現象に、おもしろくないと思っている人も結構います。それは何を隠そうクラブの主役でもあるDJ、そして純粋に音楽や踊りを楽しみたいと思っている昔からクラブ通いをしていたような人たちです。

踊るどころか、ろくに音楽さえ聞いていない人だらけのねるとんパーティでプレイをしても、DJは腹の底ではおもしろく思っていません。結果的にプレイも怠慢になって、音楽もつまらなくなります。すると今度は、昔からクラブ通いをしていたような人たちに不満が生じてくるわけです。

だからいまは、こういった音楽好きな層の人たちの間では、ねるとんパーティはもちろんのこと、「ゲイナイト」と称したイベントを全般的に敬遠する傾向が出てきています。音楽や踊りを楽しむならば、別にふつうのクラブに行けば、事が足りるからです。

■「ねるとんバブル」に過ぎない現在のクラブ人気

こういった動きに対処するために、主催者もあえてメンオンリーにはせずに、GAY-MIXと称してみたり、時間をずらしてメンオンリー、ウーマンオンリーにするといった工夫がとられています。全体的に見ると集客数が増加しているように思えるゲイナイトも、ねるとんパーティといった出会い系のものを除くと、実際は数が減ってきています。

さて、今月からこの連載では、出会い系イベントなどで最近クラブへ通い始めた人たちや、まだクラブに行ったことがないような人たちを主な対象として、クラブ遊びの基本的なアウトラインを抑え、正しいクラブファンとなることを目的とした講座をお伝えしていきたいと思っています。数だけ多ければそれでいい、いい男が、いい女がいればそれだけでいいパーティ、なのではなく、どうせ行くのならクラブを様々な視点から評価できた方がきっとおもしろいはず。現在のクラブ人気が「ねるとんバブル」になんてなることのないためにも、この連載を通じて、真のクラブファンへと 共に成長していきましょう。


筆者:高橋誠/MILK編集部


|milk vol.16 1999/04/22 |home1999

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