【連載】 赤杉康伸のロビーイング・リポート 第2回

□筆者:赤杉康伸(あかすぎやすのぶ)

1975年5月5日生まれ。2001年5月に共同代表として東京メトロポリタン ゲイフォーラム(TMGF)創設。2001〜03年:レインボーマーチ札幌 実行 委員 2006年:東京レズビアン&ゲイパレード2006 実行委員。現在「All About Japan同性愛」で政治コラム「女スパイ赤杉康伸の口紅政治情報」 連載中。共編・著書に『同性パートナー−同性婚・DP法を知るために−』 (2004年・社会批評社)がある。
http://www.geocities.jp/novkun25/  novkun@hotmail.com


自分たちが税金を納め続けているこの日本で、いつになったら同性愛 カップルは「二流市民」から脱却することができるのか?この連載 では「同性パートナーシップ法」をめぐる日本の最新事情について、 TMGF共同代表の赤杉康伸さんが報告してくれます。

■ 東京レズビアン&ゲイパレード2006での「画期的な出来事」

東京都渋谷区にて今月12日、「東京レズビアン&ゲイパレード(TLGP) 2006」が開催された。出発直前、雷雨に襲われるアクシデントがあった にもかかわらず隊列参加者は2292人、沿道での応援や代々木公園イベン ト広場への来場などの参加者が約1500人と、合計約3800人が参加した。

昨年のTLGP2005では、大阪府議会議員である尾辻かな子氏が、自身がレ ズビアンであることをカミングアウトし、大きな話題となった。今年は そうした派手な動きはなかったものの、画期的な動きが幾つか見られた。

まずは、東京都のHIV/AIDS担当の現職員、そして、保坂展人衆議院議員 (社会民主党所属)がパレードに参加して歩いたこと。ともに個人ベー スでの参加ではあるが、画期的な動きと言えるだろう。また、昨年に引 き続いて上川あや世田谷区議会議員、尾辻かな子大阪府議会議員も、そ れぞれ個人ベースで参加している。

性教育バッシングのお膝元の「東京」で開催されたパレードにおいて、 「人権教育における性」と題するシンポジウムが、パレード出発前に開 かれたことも特筆すべき出来事。祝祭としての面に目が行きがちだが、 こうした取り組みもまた、パレードの重要な要素の一つだ。

□尾辻かな子ホームページ
http://www004.upp.so-net.ne.jp/otsuji/
□世田谷区議会議員 上川あや
http://ah-yeah.com/index.html
□保坂展人(8/12付け日記にパレードに参加した感想を掲載)
http://www.hosaka.gr.jp/

■ 同性パートナーシップ法について考えるイベントが次々と開催

LGBTI当事者によるパートナーシップ法関連のイベントも、ここ数年で 幾つか催された。代表的なものとしては、2003年8月、民主党の衆議院 議員(当時。現在は参議院議員)の家西悟氏を講師に、東京で催された 講演会(主催:同性パートナーの法的保障を考える有志ネットワーク)、 2004年8月に大阪で開催されたシンポジウム「同性パートナーを考える」 (主催:ユニオンステーション)、2005年の東京国際レズビアン&ゲイ 映画祭の企画として開催されたシンポジウム『何故、今、同性婚/DP法? 〜同性パートナーと生きるこれからのために〜』などが挙げられる。

■ 尾辻かな子氏の呼びかけで始まった「RainbowTalk2006」

今年2〜4月、レズビアンであることを公言している大阪府議会議員の 尾辻かな子氏の呼びかけで、「RainbowTalk2006同性パートナーの法 的保障を考える全国リレーシンポジウム(以下「RT2006」)」が全国4 都市5会場(大阪、東京(2回)、高松、札幌)で開催された。各地で のシンポジウム開催は、それぞれの地域の団体が主催した。

□RainbowTalk2006(RT2006)
http://homepage2.nifty.com/rainbowtalk2006/

RT2006では、全国の各都市で色々なLGBTI当事者が登場して、自分たちが 実際に感じていること・体験したこと等について話をした。パートナー シップ法と一口に言っても、性的指向や性自認などによって、そのニー ズは十人十色。また、具体的なニーズについて議論された会場もあれば、 「地域性からカミングアウトすることがそもそも困難である」という問 題が挙げられた会場もあった。そうした様々な声を掬い上げることが、 パートナーシップ法関連の活動を進める上での第一歩と言える。そして、 問題を参加者が一旦共有した上で、自分たちに何ができるのか、解決の 糸口はどこにあるのかについて智恵を出し合えたことこそ、RT2006の大 きな成果であったと思われる。

オンラインマガジン「Sexual Science」ではRT2006終了後、尾辻かな子 さん、大江千束さん(LOUD代表)、永易至文さん(ジャーナリスト)、 棚橋政行さん(早稲田大学大学院法務研究科教授)による座談会「同性 カップルの法的保障身近な不利益を点検し、必要に応じて提訴も」が 掲載されているので、MILKの読者にもぜひ一読していただきたい。

□座談会・同性カップルの法的保障 (Sexual Science)
http://www.medical-tribune.co.jp/ss/2006-6/ss0606-3.htm

■ 大阪府住宅供給公社の「画期的な動き」

大阪府の住宅供給公社は、2006年5月1日、公社の賃貸住宅で単身者同士 の「ハウスシェアリング制度」を導入した。従来、公社の住宅は夫婦や 血縁関係のある親子・兄弟などに入居が限られてきた。しかし「ハウス シェアリング制度」では単身者同士ということで、同性のカップルにも 入居が認められることになった。

□大阪府住宅供給公社
http://www.osaka-kousha.or.jp/

■ 同性パートナーシップ法をテーマにした書籍も登場

ここ数年、同性婚やドメスティック・パートナー法(以下「DP法」)な どの、同性パートナーシップ法(以下、単に「パートナーシップ法」) に対して、日本でも注目が集まるようになってきている。2004年7月には、 パートナーシップ法について本格的に論じた『同性パートナー 同性婚・ DP法を知るために』(赤杉康伸・土屋ゆき・筒井真樹子 共編・著 社会 批評社)が出版された。また、ゲイ雑誌『クィア・ジャパン・リターン ズ Vol.0』(ポット出版、2005年)では、「Couple&Law 同性婚をめぐっ て」と題する特集企画が組まれ、法学、社会学、コミュニティ活動の論 者による意見が展開された。

□同性パートナー 同性婚・DP法を知るために(社会批評社)
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/shakai/top/62-X.htm
□クィア・ジャパン・リターンズ Vol.0(ポット出版)
http://www.pot.co.jp/pub_list/pub_book/ISBN4-939015-77-7.html

2006年6月には、アメリカにおける同性婚論争をテーマにした『同性婚 ゲイの権利をめぐるアメリカ現代史』(ジョージ・チョーンシー:著、 上杉富之・村上隆則:訳、明石書店)が出版された。本書は、アメリカ のレズビアン&ゲイが20世紀にたどってきた「現代史」の記録である。 同性婚をDP法よりも一段高いものとして位置づけている点は若干気にな るし、独特の戸籍制度がある日本とは単純に比較できない一面もあるも のの、資料的な価値が高い一冊だ。アメリカにおける現在の同性婚論争 が突発的なものでは決してなく、歴史のプロセスを経た末の「婚姻制度 の次なるステップ」であることを理解する上での良書であると思われる。

□同性婚−ゲイの権利をめぐるアメリカ現代史(版元ドットコム)
http://www.hanmoto.com/bd/ISBN4-7503-2336-5.html

■ 自由民主党の変容とその理由

筆者が共同代表を務める「東京メトロポリタン ゲイフォーラム(TMGF)」 では、2001年5月の創設以来、国政選挙・東京都内の地方選挙の際に、 立候補予定者・政党に対してゲイに関する政策アンケート調査を行い、 結果をHPにて公開してきた。昨年は、春に東京都議選、そして9月に総 選挙が実施された。TMGFでは、東京都議選(前回は2001年春)、総選挙 (前回は2003年11月)ともに2回目のアンケート調査を行なったが、前 回の調査と比較すると明らかな変化が読み取れる。

□東京メトロポリタン ゲイフォーラム
http://www.geocities.jp/tmgf2001jp/

それは、自由民主党(自民党)の変容である。都議選で見てみると、 2001年調査では自民党東京都連が回答を寄せていたにも関わらず、 2005年調査では回答なしであった。総選挙においては、この動きはさら に明確となる。2003年調査では、東京都内小選挙区に擁立された自民党 公認候補(全24名)のアンケート回答率は25%(=6名が回答)だった。 しかし、2005年調査では、自民党公認候補からは全24名中わずか1名しか 回答を得ることができなかった。

この変容が起こった背景の一つとしては、2005年春に自民党がウェブ上 で実施したアンケート「過激な性教育・ジェンダーフリー教育に関する 実態調査」が考えられる。このアンケート調査の「家庭科教育の問題に ついて」という分野では、「これまで家族のかたちを否定、軽視し、現 行法から除外される婚姻形態(事実婚や同性婚)など多様な家族観を教え ている」という項目が入れられている。政権最大与党である自民党が 「多様な家族観が学校で教えられること」を問題視しているという事実 は、LGBTIにとどまらず、もっと広く知られるべきであろう。

□自由民主党
http://www.jimin.jp/

■ こばり正江氏 「差別と偏見はいたしかゆし」

TMGFでは今年6月投開票の中野区長選挙に際し、立候補予定者に対して アンケート調査を行なった。その中で、こばり正江氏(無所属・新人) は、同性愛者に対する差別・偏見についてどう考えるかという設問に対 し「差別と偏見はいたしかゆしだと思います」との珍回答を送ってきた。

こばり氏は同時に、小・中学校等の授業において同性愛者について扱う ことをどう考えるかという設問に対しても、「小中学生に最初からその 様なお話しをするということはいかがなものかと思う」との理由で「扱 うべきではない」を選択している。ちなみに、こばり氏はわずか1605票 しか集められず、立候補者5人中4位の結果で落選した(最下位は1442票)。

□中野区ホームページ
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/
□中野区長選挙 投票日平成18年6月11日開票結果
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/senkyo/

■ 11月投開票・新宿区長選挙

このような回答を寄せる立候補予定者が依然としているかぎり、TMGF アンケート調査を続ける意味がまだまだあるのだろう。2006年11月には 日本最大のゲイタウンを抱える新宿区にて区長選挙が行われる。TMGFで はこの選挙に合わせて、アンケート調査を実施する予定になっている。 区長候補がどのような政策を持ち合わせているのか、詳細が判明次第、 こちらでもぜひ取り上げたいと思っている。LGBTIを正しく理解してい ない候補者を、間違って選ばないために。

・その他関連リンク

□東京レズビアン&ゲイパレード2006公式ホームページ
http://www.tlgp.org/
□家西さとるホームページ
http://www.ienishi.gr.jp/cgi-bin/index.cgi
□同性パートナーの法的保障を考える有志ネットワーク
http://members.aol.com/dpsnetyushijp/
□東京国際レズビアン&ゲイ映画祭
http://www.tokyo-lgff.org/2006/index.html
□社会批評社
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/shakai/top/shakai.htm
□スタジオ・ポット/ポット出版
http://www.pot.co.jp/
□明石書店
http://www.akashi.co.jp/
□公明党
http://www.komei.or.jp/
□民主党
http://www.dpj.or.jp/
□日本共産党
http://www.jcp.or.jp/
□社会民主党
http://www5.sdp.or.jp/
□新宿区ホームページ
http://www.city.shinjuku.tokyo.jp/


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