(毎月22日配信・無料) 【今月の映画】 スティーヴン・ダルトリー監督作品 『めぐりあう時間たち』

第二次世界大戦が始まって間もない1941年、イギリスのサセックス。 コートを着込み、足早に川に急ぐヴァージニア・ウルフ。 死を決意したヴァージニアは、残してきた遺書の文章を心の中で繰り返し、 ゆっくり川の中へと足を進める。流れに身を委ねた瞬間、彼女は勢いよく水の底を流されていく……。

ゲイの作家マイケル・カニンガムのピューリツア賞受賞作である同名原作をもとに、 『リトル・ダンサー』のスティーヴン・ダルトリーが充実したキャストで映画化。バ イの傾向もあったイギリスの女流作家ヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」を モチーフに、創作に苦しむウルフ、家庭生活に疑問を持ち始めた主婦、そしてエイズ に感染したゲイの友人のためにパーティを企画するレズビアンという異なる世代の女 性像を力強く描きだす。3人の女性たちの心象風景を捉えたマイケル・カニンガムの原作を巧みに捉えて再 構成し、役者たちの素晴らしい演技と共により深みのある傑作に仕上がっている。フィリップ・グラスの音楽も絶品。

3つのエピソードが絡まっていく構成と主演女優たちのアンサンブルが実に見事。 ストリープのゲイの友人を演じたエド・ハリストニ・コレットクレア・デーンズミランダ・リチャードソンらの好演も印象に残る。とくにエド・ハリスの巧さには本当に感心。 今まで映画の中でいろいろなゲイが描かれてきたけれど、 今回のハリスほど存在感と説得力のあったものはなかったのではないだろうか。 生と死、家族、愛、セクシャリティ、孤独といった事柄が重層的に語られ、類い稀な傑作になった。

これは女たちの物語であると同時に男たちの物語でもある。ローラの息子、そして エイズに感染した詩人の視点が、もう一つの軸として存在することで物語に幅を与えている。 ダルトリー監督の前作『リトル・ダンサー』でも慣習的な「男らしさ」という考えに対す る批判が盛り込まれていたけれど、この映画でも家庭生活に疑問を抱く主婦や、同性 の恋人を持ちつつ人工授精でできた娘もいるレズビアンが登場するなど、「家族」と いう慣習的な社会制度に対して懐疑的な視点を投げかけている点がミソです。

■原題:The Hours
■監督:スティーヴン・ダルドリー ■脚本:デイヴィッド・ヘア
■主演:メリル・ストリープ/ジュリアン・ムーア/ニコ−ル・キッドマン
■2002年/アメリカ/115分
■配給:アスミック・エース、松竹
■2003年5月17日(土)より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹・東急系にてロードショー
MILCINEMA評価:★★★★

■受賞・出品歴:
第75回アカデミー賞 最優秀主演女優賞受賞
第60回ゴールデン・グローブ賞 作品賞&主演女優賞受賞
第55回イギリス・アカデミー賞 主演女優賞&音楽賞受賞
第53回ベルリン国際映画祭 最優秀女優賞受賞
第85回ナショナル・ボード・オブ・レヴュウ 最優秀作品賞受賞
第28回ロサンジェルス映画批評会協会 主演女優賞受賞
第22回ボストン映画批評会協会 助演女優賞受賞
第3回アメリカン・フィルム・インスティテュート ベスト10入選
第1回シアトル映画批評家協会賞 最優秀脚本賞受賞
第6回ラスヴェガス映画批評家協会賞 主演女優賞&助演男優賞受賞
ダラス・フォートワース映画批評家協会 ベスト10入選
第11回サザン・イースタン映画批評家協会賞 最優秀作品賞受賞
第7回美術監督組合 優秀プロダクション・デザイン賞候補
第3回ヴァンクーヴァー映画批評家協会4部門受賞
第8回俳優組合 4部門ノミネート
第15回USCスクリプター・アワード受賞
第55回脚本家組合 最優秀脚色賞受賞
第54回監督組合 監督賞候補

□OFFICIAL SITE
http://www.jikantachi.com/




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