(毎月22日配信・無料) 【今月の映画】 ペドロ・アルモドバル監督作品 『トーク・トゥ・ハー』

看護人のベニグノは、密かに思いを寄せていたバレリーナ志望のアリシ アが交通事故で植物状態になった時、彼女を看護することを願い出る。 彼の思いは叶えられ、渾身の愛を彼女への介護に捧げる。ジャーナリス トのマルコは取材で知り合った女闘牛士リディアと恋におちるが彼女も また事故で植物状態になる。2人が同じ病院に収容されたことで、報わ れぬ愛に生きる男2人が出会う…。『オール・アバウト・マイ・マザー』 から3年ぶりとなるペドロ・アルモドバル監督の新作。第75回(2003年)アカデミ ー賞最優秀脚本賞受賞、ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞受賞。

ゲイテイストが炸裂していた初期作品とは異なり、アルモドヴァルがか なり正攻法で捉えた愛の物語。とはいえ彼らしいひねった視点が、凡庸 なラブストーリーとは一線を画す出来になっていますし、深読みすれば ゲイ映画としても堪能できます。この映画の中では誰一人として思いを 到達させることはできない。目を覚ますことも会話も出来ない女性に対 し、日々話しかけることで交流を持とうとする二人。そして目の前に立 ちはだかる壁の強固さにもがくだけ。普段僕たちは話すことでお互いを 理解しようとするが、ここではどんなに語りかけても相手に理解しても らうことはできないし、愛を伝えることはできない。しかし、植物状態 でないとしても、どんなに饒舌に語ってもそれが相手に伝わらず、お互 いを理解できないことがある。はたして人間とは完全にわかりあえ、愛 しあうことができるのか? 変わったシチュエーションを扱いながら、 人間を理解し愛することの困難さという普遍的な問題が描かれていく。

これは思いを相手に伝えられなくともそれを到達させようとする、崇高 でありながらも邪推な男たちの悲しい物語。そしてその男たちも後半緊 密な関係を作り上げていく点がミソ。最後の洒落たオチも素晴らしいし、 アルモドヴァル作品としては最高傑作といってもいいでしょう。

また、男の主観で捉えられたこの映画の中で、女性は完全に「対象物」。 アルモドヴァルの映画では女性が主体となることが多いので、このよう なケースは非常に稀なのだけど、逆に言えば映画の中の女性性がより強 調され、語らない人物像が膨らんでいきます。バレリーナと闘牛士とい う肉体的でアクティブな職業の女性が、植物状態で寝たきりになるとい う設定がミソだけど、そうした状態のままでも存在感が凄いのは女優の 力量ですね。

■原題:Hable con Ella
■監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
■主演:レオノール・ワトリング/ハビエル・カマラ/ロサリオ・フローレス
■2002年/スペイン/113分
■配給:ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ
■2003年6月28日(土)よりテアトルタイムズスクエア・銀座テアトルシネマほか全国ロードショー
MILCINEMA評価:★★★★

■主な受賞・出品歴:
第75回アカデミー賞 最優秀脚本賞受賞
ゴールデングローブ賞 最優秀外国語映画賞受賞
全米ナショナル・ボード・レビュー ヨーロッパ映画賞受賞
ロサンゼルス映画批評家協会賞 ゴールデンサテライト賞受賞

□OFFICIAL SITE
http://www.gaga.ne.jp/talktoher/




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