(毎月22日配信・無料) 【今月の映画】 トッド・ヘインズ監督作品 『エデンより彼方に』

1957年のコネチカット州。キャシーは最愛の夫と子供に囲まれ、地元の 新聞で取り上げられるほどの模範的な主婦として賞賛されていた。しか し、ある晩、キャシーは夫のある秘密を目撃してしまう。同じ頃、新し くやってきた黒人の庭師レイモンドと知り合い、彼の知性に惹かれ親し くなるが、有色人種との関係をよく思わない土地柄ゆえ、よからぬ噂を 立てられるようになる。そして、秘密を知られて以来、フランクは自暴 自棄になり始める。一方、キャシーは周りの目も気にせずレイモンドと さらに深い関係になっていく…。

ポイズン』や『ベルベット・ゴールドマイン』など、自分の偏愛する 世界をリメイクすることに執着するトッド・ヘインズ。今回はライナー ・ヴェルナー・ファスビンダーフランソワ・オゾンなど、ゲイ監督に も人気が高いダグラス・サーク作品を忠実に再現してみせた。撮影、美 術、衣装などは実に美しく、ただ単に古典映画の再現というのではなく、 現代的な感覚を導入させている。さらにジュリアン・ムーアの細かく深 みのある演技は実に素晴らしい。『めぐりあう時間たち』でも同じよう に50年代の主婦を演じていたが、対照的な生きざまをそれぞれ説得力を 持って演じた。

今回の作品の最大のポイントはデニス・クエイド演じるゲイの夫フラン クだろう。家庭では良き夫を演じつつも、若い男の愛人と情事を重ねて いた。それを妻に発見され、カウンセリングを受けたり、二人で旅行に 出かけ、やり直しを図るものの、すべては元の木阿弥に…。この映画の 中の人物設定のなかで、ヘインズ本人がかなり思い入れを抱いていたの ではないかと思わせるし、クエイドも不誠実でありながらも、自分のセ クシャリティに苦悩する男の姿を好演している。またゲイバーや、同性 愛を「治療」するカウンセリングなど、当時のゲイ風俗の描写も面白い。 このあたりは『セルロイド・クローゼット』あたりと一緒に見直してみ ると、より一段と興味深いかもしれない。

■原題:Far From Heaven
■監督・脚本:トッド・ヘインズ
■主演:ジュリアン・ムーア/デニス・クエイド/パトリシア・クラークソン
■2002年/アメリカ/107分
■配給:ギャガ・コミュニケーションズ Gシネマグループ
■7月12日(土)よりシネマライズ渋谷にてロードショー
MILCINEMA評価:★★★☆

■主な受賞・ノミネート歴
アカデミー賞主要4部門ノミネート
最優秀主演女優賞・最優秀脚本賞・最優秀撮影賞・最優秀作曲賞
ヴェネチア国際映画祭 最優秀主演女優賞
全米ナショナル・ボード・オブ・レビュー 最優秀主演女優賞
ニューヨーク映画批評家協会賞 最優秀作品賞・最優秀監督賞他
ロサンゼルス映画批評家協会賞 最優秀主演女優賞・最優秀撮影賞他
(その他全49賞受賞、29賞ノミネート)

□OFFICIAL SITE
http://www.gaga.ne.jp/eden/




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