(毎月22日配信・無料) 【今月の新刊】 黒野利昭氏を追悼する文集 『ありがとう、さようなら』

2002年5月3日に急逝した新宿二丁目のバー「クロノス」のマスター、ク ロちゃんこと、黒野利昭氏を追悼する文集が一周忌の日に発行された。 常連客であり、店名の名付け親とも言われている現代詩を代表する詩人 高橋睦郎氏が編集し、クロちゃんを慕ってきた常連客が文章を寄せた。 歌人の俵万智氏、映画評論家の四方田犬彦氏、黒田邦雄氏、画家の金子 国義氏、人形作家の四谷シモン氏、歌舞伎役者の中村雀右衛門氏など、 芸術界の第一線で活躍している錚々たる面子を始め、有名無名を問わず、 クロちゃんの毒舌に魅了された人たちが追悼文を書いている。

このクロノスは高橋氏が言うように、「広く芸術全般にわたる有名無名 を超えた梁山泊の趣で、匹敵するスペースは同時代の東京の何処にも捜 せまい」ものだった。クロちゃんの映画、演劇、その他芸術分野に対す る豊富な知識と鋭い批評性は追随を許さず、新宿二丁目を超えて、東京 のバーの中でもユニークな存在だった。だからこそ、多くの媒体が取り 上げ、年齢・職業・性差を超えた多彩な客で毎晩賑わっていたのだろう。

文集に寄せられた人々の顔ぶれの多彩さでもそれがわかるし、各人それ ぞれクロちゃんと過ごした時間への想いが率直に描かれ、読んでいて感 動するものがある。マスターの人望とそれに惹きつけられた客層の豊か さが、この文集には凝縮されていると思う。僕個人も、この店に通うこ とで学ぶものは多かったし、この店なくして今の自分はなかったろう。

クロノスは今でも故人の遺志を引き継ぎ店の灯は灯されている。興味が ある方は一度店に足を運んでみるとはどうだろうか。この文集もクロノ スで販売されている。(クロノスは年内で営業を終了します)

■編集:高橋睦郎 ■本体価格:3,000円
■発行:黒野利昭を偲ぶ会
■問い合わせ先:クロノス
〒160-0022 東京都新宿区新宿2-7-3 ヴェラハイツ新宿御苑3F
TEL:03-3354-0327 




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