【連載】 ロビーイング・リポート

たとえあなたが異性愛者であったとしても、同性愛者の声に耳を傾けている 候補者を見かけたら、迷わずその人に一票を投じるべきでしょう。なぜなら その候補者は、「すべての市民のための政治家」になれる人だからです。

【第1回】 11月9日投票・衆院解散総選挙を考える

■自由民主党・公明党・保守新党について考える

連立与党「自由民主党」「公明党」「保守新党」の総選挙用マニフェス ト・公約の中には、いずれも性的少数者に関連したものは存在しない。 しかし、連立与党は、メディアの取材規制につながるなどの理由から先 ごろ廃案が決まった「人権擁護法案」の中で、「性的指向による差別的 取り扱いの禁止」を謳っている。自民党の地盤は、主に農村や漁村部と いった、地縁・血縁が根強く残る地方であるため、性的少数者の人権問 題については軽視されがちであった。

しかし、人権団体や当事者らによる地道な活動から「同性愛は生まれつ きのもの」という認識が広まったおかげで、ここ数年で候補者たちの意 識も変わり始めている。各団体が選挙のたびに実施している政策アンケ ートでは、保守系政党候補者からの回答は徐々に増えてきており、内容 を見ると性的少数者の人権に配慮したものもある。

「同性愛者の人権擁護を進めるために、まずは日本国内の法体制を整備 すべき。同性パートナーの法的保障については『内縁関係』を広く捉え 直し、同性パートナーも『内縁関係』に含めることで実質上の不都合を 解消する。」(自由民主党東京都第9区・菅原一秀氏)

「差別と偏見のない社会の実現、或は全ての国民が幸せに暮らせる真の 意味でのバリアフリー社会の実現こそ政治の務め。何人(なにびと)であ ろうと差別や偏見の対象になってはならないと考えます。同性パートナ ーの法的保障については、同性カップルの準婚制度(欧米におけるPACS 制度やドメスティックパートナー制度など)を認めたい。実際に実績を あげている制度を導入したほうが、無用の混乱を避けられるでしょう。」 (自由民主党東京都第16区・島村宜伸氏)

「同性愛者への差別・偏見は望ましくない。差別などによる具体的な被 害から同性愛者の人権を守る法的枠組について必要なら検討すべき。エ イズ問題については、同性間の性的接触による感染者・患者に対する差 別的取り扱いの撤廃(法整備や広報による)すべき」(自由民主党東京 都第21区・橋本城二氏)

「同性愛者には私は特別の偏見はもっていない。同性愛者の人権政策・ 施策については世論の動向を見守りながら、鋭意検討して行きたい。同 性パートナーの法的保障については、同性カップルにおいて生じている 不都合につき、法制度の整備(特例法の制定や民法などの改正)により 解決を図るのが望ましい」(自由民主党東京都第23区・伊藤公介氏)

□自由民主党ホームページ
http://www.jimin.jp/
□菅原一秀(すがわらいっしゅう)ホームページ
http://www.isshu.net/
□島村宜伸(しまむらよしのぶ)ホームページ
http://www.shimamura-yoshinobu.com/
□橋本城二ホームページ
http://www.giin.tv/joji/
□伊藤公介ホームページ
http://i-kousuke.com/

□公明党ホームページ
http://www.komei.or.jp/
□保守新党ホームページ
http://www.hoshushintoh.com/

※公明党とは直接関係はないが、同党最大の支持基盤である「創価学会」の中には、 同性愛者らセクシュアルマイノリティによるグループが全国に存在している


■民主党について考える

民主党の「次の内閣(イギリスにおける「影の内閣」の民主党版)」の 政策である「民主党政策集私たちのめざす社会」の【2】消費者・人 権・共同参画の「暮らしと人権」部分には、今年7月に全会一致で成立 した性同一性障害者の人権に関する「性別取扱い特例法」に関連して、 「民主党は、子どもの有無は問わないことを要件に加えるなど、更なる 当事者の人権を確立します。」と言及している。「民主党政権政策/マ ニフェスト」では、「差別の解消をめざす法律を制定します。」とし、 「社会にまだまだ残っているさまざまな差別を解消するため、平成17年 度末までに、法務省から独立した人権委員会の設置などを盛り込んだ、 『人権侵害の救済に関する法』、すべての障害者に『完全参加と平等』 を保障し、具体的な差別の禁止を規定する『障害者差別禁止法』(中略) など、差別解消のための法律の制定をめざします。」と明言している。

□民主党ホームページ
http://www.dpj.or.jp
□「民主党政策集私たちのめざす社会」上記該当部分URL
http://www.dpj.or.jp/manifesto/index/02_03.html#16
□「民主党政権政策/マニフェスト」上記該当部分URL
http://www.dpj.or.jp/manifesto/03_04.html#04_01


■社民党について考える

性的少数者についての明確な記述があるのは、まず、社会民主党の総選 挙用マニフェスト。「8つの約束」部分の「人権」の項目の中で、「ゲ イ・レズビアンなど性的指向への偏見にもとづく差別の撤廃に取り組み ます。」「性同一性障害者の人権が守られるよう、特例法の改正に取り 組みます。」と謳われている。具体性には欠けるものの、「性的指向」 について明言し、「ゲイ・レズビアン」という言葉を用いているのは、 今回の各政党のマニフェストでは、社会民主党だけである。

□社会民主党ホームページ
http://www5.sdp.or.jp/
□「社民党の政策3つの争点8つの約束」上記該当部分URL
http://www5.sdp.or.jp/central/topics/03sousenkyo/y8.html


■みどりの会議について考える

今回の衆院選では公認候補を擁立しないものの、25名の立候補者を推薦 する「みどりの会議(代表運営委員中村敦夫参院議員)」では、基本 政策である「みどりの政治宣言」にて、「誰もが互いを尊重するために (人権・人と人の関係)わたしたちは、多元的な価値観が尊重される社 会を目指しています。家族・恋愛形態、言語、国籍、性別、肌の色、文 化、門地などいずれにおいても、そのことにより差別や社会的な不利益 があってはならないのです。そのために、人権に関連する条約を積極的 に批准するとともに、個人・性の尊重という視点から、法律・社会制度 を徹底的に洗い直す必要があります。そして、あらゆる差別を解消し、 実際に人権が保障される寛容な社会を実現します。」と、「家族・恋愛 形態」による差別の解消と、「個人・性」の尊重を謳っている。

□みどりの会議ホームページ
http://www.midorinokaigi.org/
□みどりの宣言 上記該当部分URL
http://www.midorinokaigi.org/sengen/sengen.html#daremoga


■日本共産党・無所属の会・新党尊命・自由連合について考える

これに対し、性的少数者の人権問題について一切動きのない政党もある。 「日本共産党」「無所属の会」「新党尊命(たける)」「自由連合」( 議席数順)では、今回の選挙において、同性愛者の政策について、党と しての公約やコメント等は発表されていない。

□日本共産党ホームページ
http://www.jcp.or.jp/
□無所属の会ホームページ
http://mushozoku.com/
□田中甲(新党尊命代表)ホームページ
http://www.koh-tanaka.com/framepage2.htm
□自由連合ホームページ
http://www.jiyuren.or.jp/


■個々の候補者について考える

現在、幾つかの性的少数者の団体が立候補予定者に対してアンケート調 査を行なっており、それらの結果から各立候補予定者のスタンスを知る ことができる。現時点(2003年10月16日)でのアンケート実施団体は次 のとおり(五十音順)。

□HSA札幌ミーティング
http://www.sapporomeeting.org/
□市民政治文化フォーラム「アクエリアス」
http://members.aol.com/rainbowfrontier/
□東京メトロポリタン ゲイフォーラム(TMGF)
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Stock/5937/

また、市民政治文化フォーラム「アクエリアス」が2002年に実施した 「全国会議員同性愛者等人権アンケート第1回調査」では、衆参あわ せて12名(2002年7月13日現在)の国会議員が回答を寄せている。回答 しているのは民主党、公明党、日本共産党、社会民主党、みどりの会議 (議席数順)に所属する議員。そのうち、今回(2003年)の衆院選に立 候補するのは、植田至紀氏(社会民主党)、枝野幸男氏(民主党)、北 川れん子氏(社会民主党)、原陽子氏(社会民主党)、保坂展人氏(社 会民主党)の5氏(五十音順)。

□植田至紀(うえだむねのり)ホームページ
http://homepage3.nifty.com/munemune/
□枝野幸男氏(えだのゆきお)ホームページ
http://www.edano.gr.jp/
□北川れん子ホームページ
http://hccweb1.bai.ne.jp/renko/
□原陽子ホームページ
http://www.harayoko.com/
□保坂展人(ほさかのぶと)ホームページ
http://www.hosaka.gr.jp/

□全国会議員同性愛者等人権アンケート第1回調査
http://members.aol.com/rainbowfrontier/anket2.htm

また、自身のホームページや広報誌等を通じて性的少数者の人権問題の 是正に関する公約を掲げている衆院選立候補予定者もいる。東京21区の 川田悦子氏(無所属・前職)は政策部分の中で、「社会の中での少数者 (障害者、同性愛者)や弱者(子ども、女性、高齢者、労働者)の立場 に立って、経済至上主義ではなく、いのち、人権、環境を守る政治を進 めます」と述べている。

□川田悦子ホームページ
http://www.etsuko.jp/


■一票の行方について考える

「性的少数者の人権」という観点からのみで選ぶとすれば、政党では社 会民主党に一票を投ずるのがよいという結論になる。「ゲイ・レズビア ン」について政策に唯一盛り込んでいる政党であるし、「性同一性障害」 についても特例法の改正を謳っている。「アクエリアス」の昨年のアン ケート調査においても、回答者数が最も多い政党となっている。

候補者については、各団体が行なっているアンケート調査の回答の有無 や内容から判断していただきたい。


■選挙後、考えていかなければいけないこと

今回の衆議院解散により、国会で審議されてきた「人権擁護法案」が廃 案となった。選挙後、新たな人権擁護法制が論議されることになるので、 その過程において、どの政党・議員がどんな動きをとるかをチェックす ることが重要だ。

また、今年に入って、あからさまではないものの「同性愛者へのバッシ ング」が「ジェンダーフリー批判」「性教育批判」と並んで、一部メデ ィアや地方議会などで相次いで展開されている。性的少数者への直接的 な攻撃ではなくても、これらの「ジェンダーフリー批判」「性教育批判」 を行なう政党・議員について、チェックしていくことも大切である。

さらに、従来の異性間婚姻家族を前提とした制度(税制の配偶者控除、 年金の第3号被保険者など)を変えていくのか否かという視点も、多様 な生き方を実現するメルクマールとして、政党・議員を判断する材料の ひとつになるだろう。


※ロビーイング・リポートはDP法制定を日本でも実現させるための連載企画です





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