【特集】1999年度年間MILKシネマベストテン
■ぴあテンやキネ旬はあてにならない? これが僕らの本当のベストテン!!

昨年1年間に日本国内で劇場公開された作品を、恒例のペンタゴン評価:テンポ(T)、ストーリー (S)、キャスト・演出(A)、映像(P)、音楽(M)の5つの視点から各5段階(25点満点)で採点。 それらの結果と昨年ホームページ上で実施した読者アンケート結果をもとに、上位10作品のチャートを決定しました。 (執筆&選考協力:KINOSUKE)


□筆者:MITSU 1972年7月生まれ・東京都出身。映画ライターとして東京国際映画祭などの取材を担当。 MILKでは創刊時より映画関連記事を執筆。映画製作、字幕製作などにも携わる


【第1位】 『マトリックス』
1999年・アメリカ
監督・製作・脚本:ラリー&アンディー・ウォウシャウスキー
出演:キアヌ・リーブス/ローレンス・フィッシュバーン/キャリー=アン・モス

□公式ホームページ(マトリックス)
http://www.whatisthematrix.com/japan/

この作品が凄いのは、今の時代性をとても反映していることと、奥が深いのに、深く考えずとも楽しめるエンタテインメントになっていることだ。アクションは最近のものでは抜きん出て爽快感があるし、被写体はスローモーションなのに、その周囲をカメラがものすごい速さで回っているように見えるブレットタイム(あるいはフローモーション)と呼ばれる映像技術が何よりも目を引く。

監督は、インディーズ系映画で頭角を顕わしたハリウッド新世代のウォシャウスキー兄弟(『バウンド』)。日本の押井守や大友克洋が演出したアニメや、イギリスやフランスのCM、音楽ビデオが参考にされているという映像は、全編オーストラリアにて撮影が行われた。ストーリーは、ギリシャ神話、聖書、不思議の国のアリス、ユング心理学などが用いられている。また、香港映画伝統のワイヤワークが効果的に取り入れられ、仮想現実の世界では、カンフーの修行を積んだキアヌが鼻をこすり、ブルース・リーの物まねをしてみせたりもする。世界のアイデアと技術力が結集して誕生しえた、20世紀を締めくくるに相応しい大傑作。


【第2位】 『ベルベット・ゴールドマイン』
1999年・イギリス
監督・脚本:トッド・ヘインズ
出演:ユアン・マクレガー/ジョナサン・リース・マイヤーズ

□公式ホームページ(ベルベット・ゴールドマイン)
http://www.inter-g7.or.jp/g2/cinema/herald/lineup/velvet/home.html

70年代のイギリスを彩ったひとつのムーヴメント“グラムロック”の栄枯盛衰を、架空のロック・スター、ブライアン・スレイドを通して描いた青春ドラマ。自由なセクシャリティーを打ち出すことで、スキャンダラスな話題を巻いて散っていった “偽者のゲイ”を描いた作品かと思いきや、“正真正銘のゲイ(バイセクシャル)” の話。興行的にも成功し、音楽も当時のアーティスト達の協力を得てカバーしたものが大ヒット。ドラァグ・クイーンも思わずうなってしまいそうなトリップな衣装やビジュアル・センスはゲイ・ムービーならでは。

物語のモデルとなったデヴィッド・ボウイは音楽の使用を断ったそうだが、タイトルの『ベルベット・ゴールドマイン』は彼の名盤「ジギー・スターダスト」のB面に収められている曲からとったもの。こういう時代が本当にあったんだということだけでも、勉強になる作品。


【第3位】 『ライフ・イズ・ビューティフル』
1998年・イタリア
監督・脚本:ロベルト・ベニーニ
出演:ロベルト・ベニーニ/ニコレッタ・ブラスキ

□公式ホームページ(ライフ・イズ・ビューティフル)
http://www.shochiku.co.jp/shochikufuji/lifeisbeautiful/

ユダヤ人としてナチスに強制収容所送りにされようとも明るく生きた家族の話。 ベニーニの奥さん役には、実際のベニーニ夫人であるニコレッタ・ブラスキが 好演し、抜群のコラボレーションを発揮している。

この作品が生まれたのは、かつてメキシコの隠れ家にとらわれていた トロッキーが、スターリン配下の暗殺者が自分のことを殺しに来るのを待ってい るとき、「今でも自分は"人生は美しい"と思っている」と書いた一文に、ベニー ニが強いインスピレーションを受けたことがきっかけ。ベニーニは、本作のストーリー のアイデアが頭に浮かんだときの様子を、「啓示のようだった」と語っている。 まさにその言葉通り、この映画は、笑ってしまうようなことが泣けてくる、そんな 奇跡的なことをやってのけた魔法のようなストーリーになっている。チャップ リン映画へのオマージュを捧げた作品ともいっていいだろう。


【第4位】 『恋におちたシェイクスピア』
1998年・アメリカ
監督:ジョン・マッデン 脚本:マーク・ノーマン/トム・ストッパード
出演:グウィネス・パルトロウ/ジョセフ・ファインズ/ジェフリー・ラッシュ

□公式ホームページ(恋におちたシェイクスピア)
http://www.toho.co.jp/cinema/shakes/welcome-j.html

喜劇から途中で完璧な悲劇へ移りかわる「ロミオとジュリエット」は、じつは 若き日のシェイクスピア自身の恋騒動を描いたものだった、という架空の設定 で描いたロマンチックコメディ。実在した人物と、想像上の人物を入り混ぜて シェイクスピアの人生を完璧にパロディ化。

近年、品のある笑いに飢えていたハリウッドでウケにウケまくり、昨年のアカ デミー賞の話題を独占、あれよあれよと作品賞を含めた主要7部門を受賞した。 グウィネスは、実生活と何ら変わらない華々しいキャラクターを演じたこの作品で、 一躍トップスターの仲間入りを果たした。ゲイであることをカミングアウトしている ルパート・エヴェレットも出演している。

グウィネス演じるヴァイオラは想像上の人物。ディカプリオ版ではない『ロミオとジュリエット』 を事前に見ておくと、上手くアレンジしていることがわかってより楽しめる。


【第5位】 『ぼくのバラ色の人生』
1997年・ベルギー=フランス=イギリス合作
監督・脚本:アラン・ベルリネール
出演:ジョルジュ・デュ・フレネ/ジャン=フィリップ・エコフェ

□公式ホームページ(ぼくのバラ色の人生)
http://www.gaga.co.jp/movie/bokubara1.html

女の子になることを夢見る少年が、幻想の世界と厳しい現実の世界を行き来するユーモラスなファンタジック・ゲイ・ムービー。二人組の芸術家“ピエール・ジル”を思わせる、徹底して人工的に作りこんだ幻想世界(ちょっとしか出ないけど)がとってもゲイチック。

また、ポップな映像だけではなく、作品の中で描かれている深いメッセージも大きな見所のひとつ。性同一性障害にしろ、同性愛にしろ、いつも問題になるのは、そういう子どもを家族が受け入れられるかどうかという点だ。しかし、この映画では、そういう子どもを受け入れた家族が、今度は周囲の環境から疎外されていく様子も描いていて、セクシャリティの問題で悩む子どもを不幸にしている根本的な問題が、家族というよりは、結局のところ、社会に根付く偏見にあることを、観る者に訴えかけているようだ。

監督はベルギー期待の新鋭、アラン・ベルリネール。'97年シアトル・ゲイ&レズビアン映画祭最優秀作品賞、'98年ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞ほか、数々の賞を獲得した。


【第6位】 『ボクらはいつも恋してる―金枝玉葉2』
1996年・香港
監督:ピーター・チャン
出演:レスリー・チャン/アニタ・ユン/アニタ・ムイ

□公式ホームページ(bitters end)
http://www.bitters.co.jp/

男装した人気アイドルに恋したプロデューサーのサム(レスリー・チャン)の恋物語を描いた『君さえいれば』の続編。セクシュアリティがテーマになっている映画だと、ゲイの存在が妙に浮き出たキャラクターで表現されたり、社会問題などを取り込んで重い雰囲気に展開することが多いのだけど、この作品は全く別。「セクシャリティの違いによる差別って何?」と言いたげに、ストレートもゲイも自然に共存している世界が、当たり前のように描かれているのは爽快。ノンケもゲイも一緒に楽しめる数少ない映画のひとつだ。。


【第7位】 『海の上のピアニスト』
1999年・アメリカ=イタリア合作
監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ティム・ロス/プルート・テイラー・ヴィンス

□公式ホームページ(海の上のピアニスト)
http://www.iijnet.or.jp/ASMIK/M/Ace/1999/Pianist/index.html

ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、 5年の歳月をかけて製作した、人間味豊かな大人のための寓話。全編を彩るエンニオ・モリコーネの音楽が感動的で、マカロニムービーへのオマージュを感じさせる船上でのピアノ対決シーンは圧巻。「大西洋で生まれ、一度も船を下りなかった、ピアニストの伝説」というコピーもロマンチック。ピアノで煙草に火を付けるシーンなど、遊び心も満点。

これまでにない、ティム・ロスのどことなく女性的で、物言わぬ悲しそうな演技も見所。彼はまったくピアノを弾けないそうだが、猛特訓と繊細な演技力でそれをうまくカバーしている。昨年の東京国際映画祭では、見事なドタキャンをかましてくれたティムだが、そんなことも帳消しにしたくなるほど、作品の出来映えは上々。


【第8位】 『シックス・センス』
1999年・アメリカ
監督・脚本:M.ナイト・シャマラン
出演:ブルース・ウィリス/ハーレイ・ジョエル・オスメント

□公式ホームページ(シックス・センス)
http://www.six-sense.com/
http://www.toho.co.jp/towa/sixthsense/welcome-j.html

昨年の全米年間興行収入第2位を記録したブルース・ウィルス主演の新感覚スリラー。第6感によって死者が見えてしまうという恐い話と見せかけて、いいように観客をミスリードしていく完璧な構成は、良質なエンタテイメントとして出色の出来。ハーレイ・ジョエル・オスメント(『フォレスト・ガンプ/一期一会』)は、全編にわたって緊張感を絶やさない演技で、アカデミー助演男優賞の最年少記録を塗りかえそうだ。

この作品で一番評価してあげなければいけないのは、何と言ってもスパイグラス・エンターテインメントのロジャー・バーンバウムとゲイリー・バーバーの二人。何の実績もないインド系アメリカ人の新人監督が書いた脚本を読んで、何十億もの製作費やら、監督の希望する俳優やら、優秀なプロデューサーやらを用意し、ここまでヒットする作品にした手腕は見逃せない。才能のある新人を発掘することを重点においているというスパイグラスは、これまで製作した3作品中、本作を含めた2作品が、本年度アカデミー作品賞にノミネートされるという快挙を成し遂げたインディペンデント系の製作会社。今後はエドワード・ノートン監督・主演に抜擢した『キーピング・ザ・フェイス』や、 ジャッキー・チェン主演のコメディ『上海ヌーン』などが公開をひかえている。ちなみに、この二人を結びつけたのは、あのウォルト・ディズニー社社長のジョー・ロスだ。


【第9位】 『イン&アウト』
1997年・アメリカ
監督:フランク・オズ 脚本:ポール・ラドニック
出演:ケビン・クライン/ジョーン・キューザック

□公式ホームページ(ギャガコミュニケーションズ)
http://www.gaga.co.jp/

田舎の高校教師が、元教え子のアウティングにより、同性愛疑惑を持たれてしまう騒動を描いたコメディ。『ジェフリー』のポール・ラドニックが、実の事件を元にして書いた物語。そのため、ゲイムービーばかりがノミネートされるアカデミー授賞式や、密かに男らしさを特訓するシーンなど、ゲイであるがゆえに楽しめる場面が満載されている。MTVミュージックアワード・映画ベストキス部門に選出された、ケビン・クラインとトム・セレックのキスシーンも見所のひとつ。結婚するためにウルトラダイエットした花嫁や、ブラピみたいなマット・ディロンなど笑えるシーンがいっぱいだ。

また、異性愛者が自分はゲイだと仮にでも言うということは、かなりの覚悟とゲイに対する理解が必要なもの。そういった意味では、この映画のラストはまさに感動的。


【第10位】 『バグズ・ライフ』
1998年・アメリカ
監督:ジョン・ラセター/アンドリュー・スタントン
声の出演:デイブ・フォーリー/ケビン・スペイシー

□公式ホームページ(ディズニー映画)
http://www.disney.co.jp/movies/

初のフルCGアニメとして大ヒットした『トイ・ストーリー』から3年。今度は主人公をおもちゃたちから昆虫に移して、さらにミクロの世界を精巧に描いた冒険物語に仕上げている。製作チームは同じくピクサーが担当。ストーリーの方は『7人の侍』の間違った用心棒連れてきちゃった版のようなもの。ほぼ同時期にドリームワークス製作による『アンツ』も公開されたが、同じ題材を扱っていながら、印象はかなり異なる出来となった。

CGアニメとしては、初のシネマ・スコープ画面が採用され、キュートなキャラクターたちの存在感が一層深みを増した。日本のアニメも到底およばないバラエティに富んだキャラクター付けはお手のもの。来月から日本で公開される『トイ・ストーリー2』では、前作と比べ格段に屋外シーンが増えているのが印象的だが、それはこの時の経験が生かされているため。


|milk vol.26 2000/02/22 |home2000

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