【フジテレビ】「おんなの町 フチタン〜南メキシコ・サポテカ族の陽気な人々〜」
■「兄弟たちは結婚して家を出るから、両親を最後まで面倒みるのはムシェ。
■だから母親は特にかわいがってくれるのよ」
■(総合評価:★★★)

同性愛者が普通に町の人々に受け入れられ、生活をしている場所があったら、さっさとこんな借金地獄の日本なんか脱け出して移住したいものだな〜、と思っていたら、ありました。そんな夢のような町が!

そこはメキシコ南部オアハカ州に位置するフチタンという地方都市。女性が強いことで世界的に有名なところで、女性が都市の経済を支えているところ(ちなみにメキシコ経済っていま絶好調なんだそうですよ)。男よりも金を稼いて家計をささえれば、男よりも豪快に酒を飲む。そしてこの町に生きる女性は皆、躍動的で力強く、どの町の女性たちよりも光り輝いている。

今年2月27日、そんな不思議な町「フチタン」の魅力に迫るドキュメンタリー番組「おんなの町 フチタン」(プロデューサー・西畠泰三 ディレクター・伊藤達弘 制作・関西テレビ報道制作部)がフジテレビ系列にて放送された。タイトルは「おんなの町 フチタン」だが、内容的にはほとんど「ホモセクシャルの町 フチタン」。ホモセクシャルの人たちが生き生きと生活している様子を、女優の岩崎ひろみが案内をする。

番組の中でフチタンの母親たちは、同性愛者(サポテカ語では「ムシェ」と言う)のことについてこんなふうに語っている。

「男の子は普通に育っていったら、何人かはムシェになっていく子はいる。それは神様の思し召しなんだから無理にねじ曲げることなく、そのまま生きていったらいい」

とくに最新の医学的な情報が入ってくるわけでもないだろうに、ここまで「何が自然か」をわかっているのは頼もしいかぎり。ホモセクシャルに理解を示すのは決まって母親の方だが、男性よりも女性の地位が低い社会だったりすると、その声が一向に社会に反映されてこない。その結果、ホモセクシャルの人たちは自分自身で権利を獲得していかないかぎり、男性社会から揶揄され、迫害を受ける。でも、このフチタンのように、男性よりも女性の地位が高い社会だと、ホモセクシャルの人たちはこんなにも生き生きと暮らせるということが、この番組を見るとはっきりとわかる。現にフチタンの父親たちは、自分の息子がムシェになることは歓迎してはいない。

フチタンではホモセクシャルの男性が自分の性的指向を意識し始めると、早くから周囲にカミングアウトをするという。当然思春期のころとなるわけだが、同年代の友達は誰がムシェであっても気にも止めようとしない。ムシェの友達とのつきあい方をみんな知っているから、決してとまどったりはしない。町の中学校を取材すれば、「一グループにひとりはムシェがいる。あそこに歩いている子もムシェよ」と、あっけらかんと子どもたちは答える。そしてムシェ自身も明るい表情で学校生活を送っている。

いかに親たちの教育が素晴らしいってこと。どこかの国々と違って…。


|milk vol.27 2000/03/22 |home2000

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