【月間メディアチェック】毎日新聞特集/朝日新聞社説/自民党「自由新報」/東京スポーツ
■性同一性障害報道も次のステップへ
■4月21日付け 毎日新聞特集記事

大学倫理委員会が正当性を認めた日本初の性転換手術として、 再びマスコミの話題になっている「性同一性障害」。 今年の夏にも実施されることに先駆けて、毎日新聞が これをテーマに、先月21日付紙上にてどこよりも早く特集を組んだ。

内容は、性同一性障害の定義についてまず触れ、これまでの埼玉医科大の女性患 者の経過を振り返りながら、その治療法について簡単に説明するというもの。 図を用いて、現在性転換法があるスウェーデン、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコの5カ国 の実施条件の比較などもしている。

そして日本における今後の法的な課題、つまり、 戸籍法にて性別変更が認めらていない点を指摘している。 神戸学院大法学部石原教授の「ドイツでは男性から女性に性転換した人が性別変更の訴訟を起こし、何年もかけて ついに連邦最高裁で認められた。日本でも今後、適切な手術が積み重ねられてい けば、司法もきちんと考えなければならなくなるだろう」というコメントで結ばれている。

今年の夏にも手術が実施される見通しであることから、これまでの概略的な 記事とは一転し、より具体性を持った記事へと変わっていたのが印象的な記事。 さらに、今回の特集では別枠で「多様な性のカテゴリー」(青野由利)と題し、染色体が 決定する性、ホルモンの影響を受ける身体的な性、社会的・文化的な性である「ジェ ンダー」の存在、そして性的指向の個人差などについても言及していて、性同一性障 害というものが、同性愛と多くの共通点を有しているということを明らかにしている点は、 高く評価したい点だ。

■「性同一性障害は同性愛とは別物」を一蹴
■4月14日付け 朝日新聞社説

性転換手術が埼玉倫理委員会に正式に認められたことで、今月13日付朝刊各紙 に再びこの問題がクローズアップされた。ところが、同性愛の医学的な定義すらまだ ないはずなのに(ちなみに異性愛の医学的な定義も存在しない)、 各紙とも、性同一性障害を説明する際、「同性愛とは異なるもの」と いう注意書きのような説明が付されているのである。

それがどこから派生してきた配慮であるのかわからないが、性同一性障害の問題 によって、同性愛者全体までを認めさせるわけにはいかないという異性愛社会の思 惑のようなものが感じられた報道に見えた。

ところが翌日14日付の朝日新聞において、同性愛問題と深く関連させて、 今回の性転換手術について論じる社説が掲載された。

論説のなかでは、 今回埼玉医大がとった判断を全面的に評価した内容とともに、「魚や両生類には、 環境変化に応じて性転換する種類がある。人間に一番近い仲間であるゴリラやチン パンジーでは、同性愛が日常的に見られることがわかってきた。」「人間の性は性染 色体だけで決まらないこと、胎児期のホルモンが重要な役割を果たすこと、育て方も 大きく影響することなどが明らかになった。」などといった文章が明記されていた。

■エイズは「妙な」お土産、同性愛の話題は話が「落ちる」
■4月21日付け 自民党「自由新報」

先月21日に発行された自由民主党機関紙「自由新報」に、80年代初頭のエイズ 報道か?、と思わせるHIV感染者や同性愛者に配慮を欠いた記事が掲載された。

問題の記事は、「海外旅行豆知識・危険の避け方」と題して、 海外でエイズを回避するためのアドバイスをするという、たいそうな趣旨のコラムだ。 その中で、エイズを「妙なお土産」と表現し、また、「タダでもいいからというのは危険きわまりなしで、やはり危 ないのは同性同士の交渉となる。もうちょっとだけ、“話が落ちる”のを“我慢”していた だければ…」と、同性愛の話題を持ち出して申し訳ないです、というライターから 読者へ断りを入れるという、ありさま。

一昔前なら、こういった読者が100%ヘテロであ ることを前提にして書かれたような記事は日常茶飯事であったが、 読者の中にセクシュアルマイノリティも一定の割合で存在することを意識せざるを得なくなった現代社会では、ほとんどお目にかからなくなった記事だ。 一般のマスコミでもほとんどお目にかからない悪質な記事で、 しかも、同紙に連載されている「おすぎのシネマここが見どころ」コーナーに、 しっかり隣接されている配慮ぶりにも、なんだか昭和の香りが漂ってきてしまうところだ。 さすが自民党。

■「脳と性」についてわかりやすく解説したレポート
■5月09日付け 東京スポーツ

5月9日付東京スポーツに連載シリーズ「ズボンの中の最新医学」にて、脳と性につ いて解説された記事が紙面の3分の1程度を割いて掲載された。

記事の内容は、脳の性差(男女差)の研究の第1人者である順天堂大学医学教育 研究室客員教授の新井康允博士のコメントを織り交ぜながら、脳の構造や性周期の 有無、性ホルモンがいかのようにして分泌されるかなどといったことを専門的な観点か ら述べ、その上で、女装癖のある男性は生まれつき脳にインプットされているもので はなく、生後のある時期に、脳が男性ホルモンのシャワーを少量しか浴びなかったこと により引き起こされるものであると説明した。

記事はその後、「生まれつきの脳は誰でも雌型であり、生後のある時期に男性ホル モンのシャワーを浴びたものが雄型の脳になる。つまり、イブの脳にアンドロゲン(精 巣から分泌される性ホルモンの一種)が働くと、アダムの脳が生まれるのである。その ときアンドロゲンが働かないと、アダムは男性の姿形をしていても、性はイブのままと いうことになる。」として結ばれている。


|milk vol.5 1998/05/22 |home1998

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