【MILKシネマ】公開直前・映画『鬼畜大宴会』徹底分析!!
鬼畜大宴会(きちくだいえんかい) 渋谷ユーロスペースにて今夏公開 (鬼プロ配給)
製作・監督・脚本・編集:熊切和嘉 製作・録音・音響:財前智広  撮影:橋本清明 照明:向井康介 美術:安井聡子 音楽:赤犬 音響効果:松本章
出演:三上純未子、澤田俊輔、木田茂、杉原敏行、小木曽健太郎、財前智広/他
上映時間:1時間46分 98年度・35mm・日・スタンダードサイズ


□筆者:MITSU 1972年7月生まれ・東京都出身。映画ライターとして東京国際映画祭などの取材を担当。 MILKでは創刊時より映画関連記事を執筆。映画製作、字幕製作などにも携わる

ストーリー&解説:
高き理想を掲げて学生運動が華やいだ70年代、その中に若者らで構成されたひとつの左翼グループがあった。小さなアパートの一室をアジトに、彼らは首領・相澤の恋人、雅美を指揮官として活動を行っていたが、しだいに内部の歪んだ人間関係が表面化し始める。そこへ出所を間近にした相澤が獄中で自殺をはかり、事態は彼らの思わぬ方向へと展開していってしまう…。

昨年のぴあフィルムフェスティバル(PFF)出品後、東京、大阪、京都、ベルリン等の映画祭で紹介され、各界を大きく動揺させている衝撃の問題作。監督は23歳の鬼才、熊切和嘉。大阪芸術大学の学生だった熊切が、3年の歳月を経て完成させた力量感溢れる作品。世界三大映画祭のひとつであるベルリン国際映画祭へ正式招待され、トロント映画祭をはじめとし、今後も10カ所以上の映画祭から招待が届いている。 PFFアワード’97準グランプリ受賞、イタリア・タオルミナ国際映画祭グランプリ受賞。

■ペンタゴン評価:2200円 T:4 S:4 A:4 P:5 M:5
(T:テンポ、S:ストーリー、A:キャスト・演出、P:映像、M:サウンド 5段階評定/2000円を超えるか、ひとつでも5がある場合、劇場で見る価値があることを示してます)

またひとつ映画界に新しい才能が誕生した。「本物」という言葉がいま最も似合う若き天才、熊切和嘉。 これまで何百回、何千回とスクリーンのなかで人が人を傷つけ、血を流し、死んでいったか知れないが、人間という生き物の凶暴性をここまで見事に表現できている作品はめずらしい。作品中の若者らの行動が、現代に生きる我々のDNAに確実に刻みこまれている残忍さや欲望、醜さを投影させたものに過ぎないことに気づくと、体の芯から打ちのめされていく感覚を覚えることだろう。

人間の道徳心や正義感の育成というものを、有害な情報を規制することで守ろうとしているマスコミや社会は、熊切和嘉という若者ただ一人にあっさり否定されてしまったようなものだ。この不意をつかれた衝撃の大きさが、果たしてどんな形で今後の日本映画界に影響を与えていくのか、十分に“警戒”する必要があるだろう。 「だから我々は油断してはならないのだ」といった、熊切監督の馴れ合いの世の中に対する警告がいまにも聞こえてきそうな、何とも不気味な力を持った作品だ。

見所は、卓越した編集技術に基づいたリズミカルな映像の美しさ、五感に直に響きわたってくるかつてない世界観を創り上げている音響効果、70年代の日本の雰囲気を色濃く再現させた衣装と音楽、そしてノンプロである俳優陣の新鮮なキャラクターと演技力だ。


|milk vol.8 1998/08/22 |home1998

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