【月間メディアチェック】読売新聞・イギリスの同性愛者合法年齢引き下げ問題をレポート
■イギリス・同性愛者の合法年齢引き下げ問題をレポート
■7月22日付け読売新聞

6月に同性愛自認が相次ぐ英政界の現状を伝えた読売新聞が、6月22日に英・ゲイ合法年齢引き下げ法案が上院で否決された結果を受けて、再びゲイ問題に揺れる英国の様子を紙面の約半分を使って大きく報告した。以下その要約。

優しそうなほほ笑み、長いまつげ、ぴったり決まったスーツ姿。労働党のスティーブン・トウイッグ氏(31)は、「ミスター下院」を選ぶコンテストがあれば、確実に最終選考まで残ると言われる。 昨年5月の総選挙には、ゲイであることを認めたうえで立候補した。初陣で自らの性的指向を明らかにして闘った候補は、それまでほとんどいなかった。

「多くの人が、僕が正直者だと評価してくれた」。英国で「カミングアウト」と呼ばれる、ゲイであることの告白はいい方向に働き、保守党の大物で、将来の首相候補とも目されていたポーティロ国防省(当時)を破り、世間をあっと言わせた。以来、意欲的に取り組んでいる課題の一つが、ゲイの性行為合法年齢の引き下げ問題だ。

興味深いことに、英国では女性の同性愛者の性行為に対する罰則規程は一切ない。しかし、男性の同性愛者に対しては歴史的に厳しく、作家オスカー・ワイルドへの迫害が象徴するように、禁固刑や財産没収など重い刑罰を科してきた。31年前にようやく21歳以上の同性愛行為が違法ではなくなったが、90年代に入っても、法的な立場は、一般の異性愛者と差別され、本人の同意があれば性行為を犯罪とみなさない年齢は、異性愛者の16歳に対し、同性愛者は18歳とされた。

同性愛者団体などは「不当な差別だ」とロビー活動を展開。94年、同性愛者の同意年齢を異性愛者と同じレベルまで引き下げる法案が採決に付されたが、保守党の大多数が反対に回り、否決されてしまった。

しかし、この流れは、トウィッグ氏が「差別の挑発に挑戦する指導者」と絶賛するブレア首相の登場で変化。ゲイへの支援を表明するブレア首相の下、トウィッグ氏のほかに、クリス・スミス国民文化相らゲイであることを公言している五人の労働党下院議員が法案の成立に向けて動いた。

トウィッグ氏本人も、この1年、ゲイであることばかりに焦点を当てたがるメディアのインタビューを嫌がらずにこなし、法案の正当性をPRしてきた。 しかし、ゲイ議員の活動は必ずしも順風満帆ではなかった。特に痛かったのは、いくつかの世論調査が、英国民の約7割は18才未満の同性愛者による性行為に反対しているというデータを示したことだった。

ゲイにいまだに冷たい世情を気にしてか、政府部内の法制担当者が法案を起草したにもかかわらず、閣僚は表に出るのを嫌い、結局、労働党の下っ端の議員が提案した形をとった。主要各党は賛否の投票を議員個人に自由意志にまかせた。

トウィッグ氏は法案改正への演説をぶつ一方、同僚、先輩議員の説得に奔走した。「大変だったのは、採決の時に議員達を議場にとどめることだった」と振り返る。放棄しても党に責められないうえ、大半の有権者の目にはむしろ良識派と映るかもしれないからだ。

法案は336対129と圧倒的多数の賛成を得て下院を通過。しかし、聖職者ら性秩序に厳格な年配の議員の多い上院は、1ヶ月後の7月22日夜、大差で法案を否決した。 夏休み休暇前の国会審議を急ぐ事情もあり、今回は法案改正は見送られる雲行きだが、ブレア政権は今後1年以内には改正実現には理解を示しており、トウィッグ氏は意気軒高。「これは本質的に人権問題。次の再審議では上院の壁を突き崩したい」と話している。


|milk vol.8 1998/08/22 |home1998

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