【MILKシネマ】公開直前・映画『プライベート・ライアン』徹底分析!!
『プライベート・ライアン』 9月26日より全国一斉ロードショー
(パラマウント映画&ドリームワークス映画提供/UIP配給)
製作・監督:スティーブン・スピルバーグ 脚本:ロバート・ロダット 製作:イアン・ブ ライス、マーク・ゴードン、ゲイリー・レヴィンソーン 撮影:ヤヌス・カミンスキー  編集:マイケル・カーン 音楽:ジョン・ウィリアムス
出演:トム・ハンクス、トム・サイズモア、エドワード・バーンズ、バリーペッパー、 アダム・ゴールドバーグ、ヴィン・ディーゼル、ジョバンニ・リビージ、マット・デイモン他
上映時間:2時間50分 98年度・米・ビスタビジョン


□筆者:MITSU 1972年7月生まれ・東京都出身。映画ライターとして東京国際映画祭などの取材を担当。 MILKでは創刊時より映画関連記事を執筆。映画製作、字幕製作などにも携わる

ストーリー&解説:
1944年6月6日、米英連合軍は艦船延べ4000隻、17万5000人を北フランス・ ノルマンディー海岸へ上陸させた。5つの上陸ポイントのうちの1つ、オマハビーチ をめざしていたジョン・ミラー大尉(トム・ハンクス)率いる米第2レンジャー大隊C中 隊の面々は、そこでドイツ軍の執拗な抵抗に合い、酸鼻の光景を目の当たりにする ことになる。その戦場から逃れたミラーたちに、3日後、ある過酷な任務が下された。 それは3人の兄を亡くした4人兄弟の末っ子で、行方の分からないジェームズ・ライ アンを捜し出して、無事に母親の元へ帰国させることであった。ミラーはC中隊から 8人の兵士たちを選び出し、ライアンの所属する101空挺師団が誤降下したと見ら れる最前線、ヌーヴィルをめざした…。

オスカーを狙いにいった前作『アミスタッド』('97)では、奴隷問題を扱った優れた 内容であったにもかかわらず、作品賞にノミネートすらされなかったという屈辱を味 わったスピルバーグ監督。今回は、7部門を獲得した『シンドラーのリスト』('93)と 同じ第2次世界大戦をテーマに、『フィラデルフィア』('93)、『フォレストガンプ-一 期一会-』('94)の2度の受賞を果たしているトム・ハンクスを主演に迎え、オスカー へ再び挑戦する意欲作。イタリア・ベネチア映画祭オープニング作品。

■ペンタゴン評価:1500円 T:2 S:2 A:4 P:4 M:3
(T:テンポ、S:ストーリー、A:キャスト・演出、P:映像、M:サウンド 5段階評定/2000円を超えるか、ひとつでも5がある場合、劇場で見る価値があることを示してます)

近年のスピルバーグ監督の作品は、『シンドラーのリスト』、『アミスタッド』に代表さ れるように、社会的なテーマを取りあげたものが目立っている。そして、それらをテーマ にする場合の方法として、できるだけドキュメンタリーに近い形で描くという傾向があっ たが、今回の新作でもそのような傾向が全面に押し出されたものとなっている。

まず目を引くのが、ハンディカメラを多用し、常に兵士と同じ視点で被写体を捉えた カメラワークで、次々と倒れていく兵士の姿を、ひとりの兵士になった立場で観客が 見ることができるように撮影されている点だ。ときにはカメラのレンズに血が飛び散ったり、 カメラ自身が攻撃から逃れようとする映像に、映画であることを忘れさせられる。また、 色彩の彩度を落とした映像によって、当時の戦場での緊迫した感覚を生み出すこと に成功している。

ただし、この作品の弱点は、緻密な映像技術と一流の俳優陣の演技を、すべて無 駄にしてしまっているストーリーの乏しさにある。ストーリーの発展がないまま、「価値 ある映像」で上映時間を徒に引き延ばす手法は、ケビン・コスナー監督作品『ポストマン』を 彷彿とさせる。前半部であれほど見せつけられた、悲惨で残酷な戦闘シーンが、 その後、何度も繰り返されるというのは、飽きっぽい観客にとっても過酷だ。 戦争の実態を伝えるという点では成功しているが、話しが面白くないのでは、 興行的にはあまり評価をおさめないだろう。

見所は、冒頭部分の30分に及ぶオマハビーチでの大虐殺戦闘シーン。撮影はア イルランド南東部の海岸で行われ、メル・ギブソンの『ブレイブ・ハート』にも参加した ベテランも含めて、1000名のアイルランド軍がエキストラとして参加した。トム・ハン クス率いる隊員のメンバーが海岸線をめざすシーンでは、ヒギンズ・ボードの名で呼 ばれる上陸用船艦を、イアン・ブライスが世界中を回ってかき集めてきた貴重な現物 が使用されている。

また、「人生最悪の体験だった」とエドワード・バーンズに言わしめた10日間におけ る基礎訓練キャンプを受けた俳優陣の演技にも注目。あまりのハードなメニューに出 演者の大半が出演を辞退すると騒ぎだし、トム・ハンクスが説得に当たったというエピソ ードもあるほど。

後半にしか出番がないマット・デイモンは、1人遅れて撮影に参加 したためキャンプには参加していない。そのため、俳優としてのキャリアの差だけで はない演技力の違いが作品内にもよく表れているのは非常に興味深い。 コアな映画ファンは、その辺りをチェックしてみるのも楽しいだろう。

□公式ホームページ(UIP)
http://www.uip.com


|milk vol.9 1998/09/22 |home1998

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