【朝日新聞】「エイズに支配された生活を送りたくない」大石敏寛さんに注目
■「エイズに支配された生活を送りたくない」大石敏寛さんに注目
■11月30日付け朝日新聞

世界エイズデーを前に、11月30日付け朝日新聞の「ひと」という連載記事に、 HIV感染者である大石敏寛さん(30)が写真付きで紹介された。 紙上では、大石さんのこれまでの活動内容と、同性愛団体(動くゲイとレズビアンの会・アカー)に 所属してから感染を知るまでの経緯を簡単に振り返った後、現在のエイズ 感染者を取り巻く社会的な環境の変化や、現在の心境についてのコメント が掲載された。以下、掲載記事より。

■エイズへの理解を訴えるHIV感染者

ひところは、ちょっぴり頼りなげな語り口が聞き手の心を引きつけた。それが今、顔立ちもふっくらと、安定感のある語り部に変身した。

1993年、実名を名乗り、「HIV(エイズウイルス)感染者」と公表した。翌94年、アジアで初めて開かれた横浜の国際エイズ会議に、スポークスパーソンとして参加することになったのがきっかけだった。

それ以来、国内や世界各地から招かれ、エイズ問題や患者・感染者が置かれている状況を理解してもらう行脚をしてきた。12月1日の「世界エイズデー」前後は特に集中し、今年も講演が続く。

同性愛者の団体に入り、活動を始めたのは89年。電話相談などを通じて、エイズの知識や情報は十分に持っていたはずだった。ところが、91年暮れ、エイズ予防月間中のイベント会場で受けた検査で、感染を知る。

「エイズ教育というのは難しい。知識を知ったうえで『感染しない、感染させない』という行動をとる感情を身につける。それが、どれだけ大切かと痛感しました」

世の中の差別や偏見、過剰反応は、横浜会議の当時とあまり変わっていない。「社会的支援が欠落した状況が続く限り、患者・感染者への治療効果は半減する」と訴える。

「健康」の目安ともなる免疫の値は、境界線あたりを行ったり来たり。だが、主治医と相談し、薬は一切飲んでいない。離れて暮らす母親から「薬を飲んで。子どもが先に死ぬのは親不孝」と言われたこともある。気持ちは揺れた。でも、考えた。

「延命に心を砕き、生きる目的を失ってしまうような、エイズに支配された生活を送りたくないんです」

東京都内の法律事務所に務め、体調に気をつけながらの活動を、感染している知人のこんな言葉が支えている。 「動かなければ、何も変わらない」

「それぞれの差異を認め合うことが共生の始まりです」。30歳。


|milk vol.12 1998/12/22 |home1998

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